ADHDに限らず、自閉症スペクトラムの易刺激性を抑えるクスリも処方されています。
【リスパダール(リスペリドン)】
小児の自閉症スペクトラムの易刺激性(興奮・衝動・怒りっぽいなど)を抑えるために処方されることがあります。本来は、統合失調症の幻覚や妄想を抑えるために出たクスリです。
ドーパミンとセロトニンの働きをブロックします。ドーパミンが過剰な時に起こる易刺激性を、その作用を抑えることで改善しようというものです。同時に、自閉や無感情などの症状をセロトニンの抑制で改善しつつ、ドーパミンを抑制しすぎないようにするクスリだと説明されています。
しかし、易刺激性のすべてが、ドーパミンの過剰作用によるわけではないですし、自然な調整ではないため、バランスよく改善されるとは限りません。そして、これらのクスリは脳に届くように作られている脂溶性の成分のため、脂肪組織に溜まっていきます。そのため、やめるときの離脱症状も多くなります。
また、ドーパミンは脳の統合能力や発語にはとても大事です。これらが阻害されることによる副作用もあります。セロトニンを抑えることにより、不安や不眠、イライラが悪化することもあります。
【エビリファイ(アリピプラゾール)】
2006年に発売された第2世代の抗精神病薬(統合失調症に対するクスリ)で、「ドーパミンの量を適切に調節してくれる」クスリとされています。売り文句としては、ドーパミンが過剰な場合は働きを抑え、不足している場合は補ってくれ、副作用も第1世代に比べて少ないという夢のようなクスリです。
発達障害の子どもには、衝動をコントロールし、気持ちを落ち着ける効果を求めて処方します。自分の世界に閉じこもる子には低用量、多動で落ち着きのない子には高容量を処方します。
しかし、当然のことながら、ドーパミンの受容体以外への作用もあります。実際、ほかの神経伝達物質や、交感神経や粘液の分泌にかかわる物質の受容体に影響します。第1世代に比べて、粘液の分泌低下や便秘といった副作用はやや少ないものの、リスパダールと同様の原理により、多くの副作用が見られます。
尚、原則としてリスパダールは5歳以上18歳未満、エビリファイは6歳以上18歳未満の患者に使用すること、となっています。また6歳未満の幼児を対象とした臨床試験は実施していません。しかし、厚生労働省が行ったレセプト(医療報酬明細書)の調査からは0歳から4歳までの間でも多く処方されていることがわかっています。
ADHD治療薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬(小児の自閉症スペクトラムの易刺激性を抑える薬を含む)、睡眠薬を処方されようとされるお医者さんにお願いします。伝えていない方は、ぜひ重要な基本的注意をご本人やご家族の方に、正確に伝えてほしいと思います。 |
「発達障害にクスリはいらない」内山葉子・国光美佳著 マキノ出版 より