子どもの主体性を育む道徳の授業(その5)(10/29)

価値を深める発問を考える

 自己を見つめ価値を深めるということは、児童が価値に対して気づいていく過程だと考えます。価値に対する気づきとは、
(1) 児童が道徳的価値を実践することの意味を見出し、今後の道徳的実践に生かす。
(2) 児童が道徳的価値を実践することの難しさに気づくことにより、価値を再認識し今後の道徳的実践に生かす。
と考えます。

 価値を深める発問は、主に葛藤の場面において用います。
 主発問「試合に勝ってみんなが大喜びをしている時、『ぼく』はどんなことを思っただろう」に対して、予想される児童の発言は、①本当のことをみんなに話す、②黙っている、が考えられます。

 実践する意味を見出す発問として、「本当のことをみんなに話したらどうなるだろう」または、「黙っていたらどうなるだろう」が考えられます。この時、どちらか一方の考えを取り上げ深めていきます。例えば「黙っていたらどうなるだろう」と発問すれば、自然と他方の考えを比較する発言が表出されると考えます。予想した時の様子の他に気持ちを聞くことを大切にしたいと思います。

 実践する難しさに気づく発問として、「本当のことをみんなに話したら、『ぼく』はみんなから責められるかもしれない」といった発言を取り上げ、「みんなに責められるかもしれないね、どうでしょう」と実践することの難しさに気づかせていくようにします。または、「黙っていたらみんなは喜ぶけれど、『ぼく』はずっと後悔してしまう」といった発言を取り上げ、「ずっと後悔してしまうかもしれないね、どうでしょう」と発問します。  

 価値を深める発問をすることにより、生活経験の異なる友達どうしにおいては、自分とは違った考えや気持ちが表出され自然に議論が生まれます。そこに、多面的・多角的な考え方や気持ちに触れ、物事を柔軟に捉え道徳的実践に役立てることができると考えます。

 本時における多面的・多角的な考え方や気持ちを私なりに考えてみました。
【多面的(一般的に他者に対しての考えや気持ち)】
〇友達に対しての見方:友達が責める(怒り、嘆き)、黙っている(友情、我慢)、理解する(納得、寛容、友情、信頼)
【多角的(一般的に自分の考えられる選択肢や気持ち)
〇自分自身に対しての選択肢:①正直に話す→責められる(辛い、悲しい)、責められない(寛容、友情、信頼)、②黙っている→責められない(辛さの軽減、後悔、友情)、本当は見られていて後で責められるかも(不安)③黙っているが今後に生かす(友情、後悔、正直・誠実) 

 価値を深める発問は、基本的に子どもの発言を捉えて発問に変えていきます。どのような発言が表出されるのか分からないところがありますが、道徳的価値を実践することの意味と難しさに留意して子どもの発言を教師の発問に変えていければと思います。

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