<書籍の紹介>「もう一回やり直したい」-精神科医に心身を支配され自死した女性の叫び-(11/8)

 これから紹介する書籍は、この事件を追い続けてきたご遺族と著者米田倫康氏の執念の物語です。


 城西こもれびクリニック(鹿児島市)を受診していた女性が2014年12月、27歳で自ら命を断ちました。ところが、彼女が残したスマートフォンの記録で、彼女はこのクリニックの医師に妻子持ちであることを隠して性的関係を迫られ、医師の治療下である種、コントロールされ、挙句、「娘は殺されたんだ!」と父親は確信するも、警察は事件性なしで処理をしたのです。その父親は15年5月、著者の会に駆け込み、診療報酬詐欺の証拠を見つけ18年1月、逮捕に導くことができました。

 そして2019年3月、鹿児島地裁で審理された7件すべてが詐欺と認められ(そのなかには彼女の父親の分もあった)、懲役2年執行猶予4年の有罪判決が。医師は控訴したものの9月には控訴棄却。上告中だが、有罪は確定したといっていいでしょう。この詐欺の件は一部大手マスコミでも報じられ、医師の顔写真も出ましたが、彼女を自殺に追い込んだという壮絶なセクハラ、パワハラによる重大な人権侵害の件は触れられないままなのです。

著者 米田 倫康 氏

 もっとも、著者はこの山口龍郎医師だけを告発しているわけではないのです。世界一の精神病院大国であるわが国において、山口医師はわが国の精神医学の歴史を振り返ると決して特別な存在ではないといいます。障害者は強制不妊手術をされ、その後、隔離収用されて来たため医師の患者に対する人権意識はひじょうに乏しいからだといいます。

 実際、今回の山口医師を例にとっても、彼女以外にも性的関係を強要された患者、従業員もおり、さらに自殺者もいるといいます。遺族たちがそういう実態を訴えても、保険医資格は剥奪されるものの、医師免許は取り上げられません。それ以前に、山口医師は日本精神神経学会認定の専門医、指導医の資格を有しており、同会には「専門医としてふさわしくない行為があったとき」資格を取り消せるとあるので著者、遺族が資格剥奪を何度も要求したが相手にされないどころか、5年毎の次回更新期にも更新する姿勢を見せたといいます。

 要するに、わが国の精神医学界自体が腐り切っており、その是正のためには少しでも多くの国民にその実態を知ってもらい、法律を変えるためといいます(独、英では医者と患者が性的関係を持った場合の刑法を定めている)。
それに新たな被害者にならないためのアドバイスも本書ではしています。

出典:「もう一回やり直したい」

山口医師は一審判決後、ある人物にこんなメールを送っていました。
「僕は1つだけやってやろうと決めていることがある。捜査機関の奴らが認知症やら何やらで精神科に来たら問答無用で隔離室に放り込んで、徹底的に痛めつける。絶対出さないしいくらでもいてもらう。完全に壊してから自宅に引き取らせる。厚労省関係者も同じ」
(左写真=女性が山口医師は既婚者と知りショックで多数の薬を飲み意識不明になった直後、同医師が彼女に送ったメール。本書より)

 

 米田氏は本書で、精神医学の歴史から振り返ると医師の患者に対する人権意識は乏しいため、山口医師は決して特別な存在ではない、と強調しています。向精神薬の副作用で自殺したとしても、それが原因かどうか実証しにくいため精神科医を罰することが難しいのです。ですから、多くの精神科医は向精神薬を躊躇なく処方したり、患者を自分の思いのままにしてしまう精神科医が現れたりするのです。

 

 外科手術の医療ミスや検査でガンを見逃した場合など、患者や家族は訴えることにより、医療従事者が罰せられることはよくありますが、精神科医の医療ミスは仮に患者から訴えられても、罰せられることはほとんどありません。

アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ<書籍紹介>『もう一回やり直したい–精神科医に心身を支配され自死した女性の叫び』(米田倫康著 萬書房)より引用

 

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