引きこもっていた生活から目標を持って仕事を始めたМさん(その1)(3/12)

 Mさん(40代女性)は、昨年の11月上旬にZoomでカウンセリングを申し込まれました。

 Мさんは人からの視線や言葉に囚われ、人が自分のことを悪く言っていると考えてしまい、飼っている犬の散歩以外は極力外に出ないようにしていました。特に最近は、犬の散歩仲間から犬のしつけがなっていない等と言われることにより、人が自分のことをどう思っているのかたいへん気になり、囚われが強く出ているとのことでした。

子 ど も の 頃 の М さ ん

 子どもの頃から、背を高くしなければだめだ、会社の社長にならなければだめだ等と、お父さんからいろいろ言われてお父さんに対してずっと気を遣ってきました。お母さんに対してもずっと従ってきました。小3の時泣けなくなり、小6の時笑えなくなったそうです。小学校卒業アルバムには「喜怒哀楽」と書いたそうです。このようなことから影響力の怖さを感じ、同時に責任感も感じるようになりました。

10代後半の時から、摂食障害になったりリストカットをしたりするようになりました。それにも関わらず、現在では両方ともありません。これらを克服してきた経験から囚われた思考はずっと続くものではないということに気づかれました。私は、これはМさんの大きな財産だと思いました。

 私が抗不安薬や抗うつ剤などの薬は飲んだのですか?と聞くと、体に合わなかったので飲みませんでした、とお話をしてくれました。もし、向精神薬を使っていたら始めの頃は不安を感じなくなるかもしれませんが、やがて薬に対する耐性ができ効かなくなってくる怖れがあります。そして薬の量を増やしたり種類を変えたりして何年、何十年も続けてしまい、依存性があるために止められなくなってしまう可能性が出てきます。

 Мさんはアダルトチルドレン、インナーチャイルド、メタ認知などの心理学で用いられる言葉をよく知っていました。そして、現実は自分が生み出している、人からの影響を受けないようにすること、自分の考えを客観的に見るようなトレーニングをしていると、これまでのご自分の考え方や行動を話されました。

 私は、幼少期に受けた心の傷によって次から次へと浮かんでくるネガティブな思考や感情に対して、Мさんが向精神薬を使わずにどう対処していくかを、ご自分で心理学の勉強をして乗り越えようとしてきたことが今日に生かされているのではないかと思いました。

 そこで、私はアクセプタンス&コミットメント・セラピー(アクト)という心理療法を紹介しました。アクトは脱フュージョン(辛い思考やに対処する方法)やアクセプタンス(辛い感情に対処する方法)を行いながら、人生の価値に沿った行動をして目標(ゴール)を達成する力を身に付ける心理療法です。

(つづく)

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うつ・不安症状心理療法の活用