引きこもっていた生活から目標を持って仕事を始めたМさん(その2)(3/15)

ア ク ト の 練 習 を す る

 まず始めに「脱フュージョン」についてエクササイズ(練習)をしました。辛い思考や嫌な思考が浮かんできた時には、「自分のラジオからまた『あんたの犬はしつけがなっていないと言われた。そんなこと言われたくない。』といった声(アクトではマインドと呼びます)が聞こえてきた。よし、私のラジオが勝手に言っているだけで聞き流していればいい」と、思うようにします。

 苦手なことや嫌なことに取り組む前や取り組んでいる時に、たくさんのマインドが聞こえてきます。そのたびに「聞き流す」ようにします。聞こえてくるマインドを消そうとしません。悲しいかな消そうとすればするほど逆にマインドが聞こえてきます。聞こえてくるマインドを受け容れ、ただ「聞き流す」ようします。マインドに囚われてしまうと、自分のやろうとしたことが行動に移せなくなってしまう可能性が出てきます。マインドに囚われた状態をアクトではフュージョンと呼んでいます。

Мさんは脱フュージョンを理解してスムーズに行いました。これまでご自分で心理学の勉強をして客観的に自分の思考を見るトレーニングをされていたことが生かされたのではないかと思いました。

 次に「アクセプタンス」についてエクササイズ(練習)をしました。見通しが持てない等の理由がわかる「不安」、理由がわからない漠然とした「不安」「怒り」「寂しさ」などのネガティブな感情が湧き起ってきた時、①感情を観察する、②感情に息を吹き込む、③スペースを作る、④感情をそっと置いておく、⑤感情をモノ化する、⑥普通のこととして捉える、⑦自分を慈しむ、⑧意識を広げる、過程で感情に対処していきます。

 Мさんは、不安の感情を観察した時、「黒い塊」に見えました。そして、「その感情がどんどん大きくなってくる」と言いました。私は「大丈夫です。大きくなったとしてもМさんよりは大きくなりません。なぜならその感情はМさんの中にあるのですから。広いスペースを作ってその感情を置いておきましょう。そしてモノ化しましょう」と話しました。

アクトの目的は自分の人生の価値に沿って行動し設定した目標(ゴール)に向けて行動していく力を身に付けることにあります。脱フュージョンやアクセプタンスは自分の価値や目標を実現してくための対処方法であり、脱フュージョンやアクセプタンスを上手に行うことを目的とはしていません。それを目標とすると、上手にできなかった場合「上手にできない」と脱フュージョンやアクセプタンスにフュージョンしてしまい、人生を充実させるための価値と目標に向かっての行動をしていく余裕が生まれにくくなってしまうからです。

(つづく)

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