更に、虐待が起きているのは、入院施設がある精神科病院だけではなく、街中にあるクリニックでも、性暴力被害などに遭っている患者がいるのです。
2018年には、東京・港区にある精神科クリニックの院長が診察中の女性患者にキスをしたなどとして、強制わいせつの疑いで逮捕されました。同医師は、過去にほかの女性患者に対するわいせつ事件を起こしていたとされています。
西前弁護士によると、性暴力をおこなった医師について情報開示請求をおこなうと、ほかにも複数の性的暴行をおこなっていた事実がみてとれることがあるといいます。
「医師は、診療・治療の名のもとに、患者のプライベートを聞き出したり、薬物を使ったりすることも自在です。計画的に、患者を自分に依存するように仕向ける傾向も見受けられます。すべての性犯罪に共通することですが、被害者は声を上げることができず、誰にも相談できない状況に追い込まれていることが少なくありません」(西前弁護士)
更に、西前弁護士は「医療保護入院の制度が悪用されることもある」と語ります。
医療保護入院は、本人が同意していなくても、医師の診察と家族など1人の同意があれば、入院させることができるという制度です。入院を必要とするものの、任意入院が困難な人が対象となります。しかし、簡単に家族が同意したり、医師が診断したりすることで、本来入院が必要ない人まで強制入院させられている現状があるといいます。
「離婚を優位に進めたり、相続を得たりするための手段として、家族が入院に同意し、もめ事で感情的になることはあったかもしれませんが、まったく精神疾患がないと思われる人が入院させられてしまうケースもあります。その後、疾患がないにもかかわらず飲まされる向精神薬の副作用で体調が悪くなり、入院が長引いた挙句に亡くなってしまった方もいます」(西前弁護士)
これが精神医療の現実なのかと思えば、あまりにもひどいと言わざるを得ません。本人の同意がなくても、強制入院をさせることができることにより、悲劇が起きているのです。例えば、家族の問題で感情的になった人が、家族の同意だけで故意に強制的に入院させることができてしまうのです。
引用:弁護士ドットコム(2021年10月16日 07時59分配信)