悩み、眠れない日々、そして決断(杉原千畝)(9/17)

(ビザがなければ、ユダヤ人は安全な国に渡ることができない。外務省の言うことに従って、ユダヤ人を見捨てるか、命令に背いてビザを発行するか…。)
 杉原は悩み、眠れない日が続きました。

 ここで、子どもたちが杉原千畝になったつもりで、自分の考えや気持ちを反映させていくようにしたいものです。【価値の内省化】

杉原千畝(出典:光文書院)

<ビザを発行する理由>
・人の命は絶対に大切
・差別、いじめ、人を殺すのは絶対に良くない
・平等が大切 等
<ビザを発行した場合>
・外交官を辞めさせられるかもしれない
・最悪殺されるかもしれない
・家族もひどい目に合うかもしれない
・国際問題に発展するかもしれない 等
<ユダヤ人>
・命が助かる
・幸せになれる
・ユダヤ人の歴史が続く 等

杉原千畝(出典:光文書院)

<ビザを発行しない理由>
・自分や家族がひどい目にあいたくない
・日本と仲良しのナチスドイツがしていることをだめとは言えない
・怖い 等
<ビザを発行しなかった場合>
・外務省に褒められるかもしれない
・家族と幸せにいられる
・ユダヤ人との関係が終わる
・ヒトラーのやりたい放題になるだろう 等
<ユダヤ人>
・殺されるだろう
・ユダヤ人の存在が途絶えるかもしれない
・私を恨むだろう 等

 杉原は上記のことが浮かび、そして悩み、そして眠れない日々を10日間過ごし、その後、「ビザ発行」の決断に至ります。

 ここで、子どもたちが杉原の決断に至るまでの悩みを疑似体験をし、道徳的実践意欲を持つことを願って、「杉原さんは、ビザを発行するまでの10日の間、何を思いながら過ごしていたのだろう?」と、子どもたちに聞いてみたいところです。

領事館でビザ発行を訴えるユダヤ人たち
(出典:光文書院)
決断の部屋
出典:産経新聞「ユダヤ人を多数救った『日本のシンドラー』杉原千畝の心受け継ぐのはのどかな山村だった…岐阜・八百津町が世界記憶遺産候補に」2016/3/22 10:00

 杉原は、悩み、眠れない日々が続きました。 
「辛い、いったいどうすればいいんだ、処刑されるかもしれない、家族も不幸になるかもしれない、でもユダヤ人のあの顔を忘れることができない、彼らは本当に助けてほしいと願っているんだ、それにナチスドイツが差別しているのはひどい、でも発行しなかったら恨まれるだろう、彼らは私ばかりではなく日本人全部を恨むかもしれない、そう考えると私一人の問題ではなくなる、でも怖い、家族も不幸になるかもしれない」
 子どもたちは、「杉原さんは、発行しようか、やめようか、考えがぐるぐる回っていたのだと思う」と杉原の悩みを感じ取るのではないかと思います。 

 杉原は、10日間という時間を費やし、ビザ発行に関するあらゆる状況を想定することにより、決断に至ることができたのだと思います。

 

 決断に至った理由は?と聞くと、
「ユダヤ人のあの顔が忘れられない」
「差別は許されない」
「将来にわたってユダヤ人が日本人を恨むようなことをしてはならない」
「命を守ることこそが大切だ」

 決断の理由は1人ひとり異なると思いますが、決断までの時間を費やすことにより、ひとたび決断すれば、迷いもなく突き進ことができるのではないかと、私は杉原の決断から学びました。

 道徳の時間で留意したいことは、理屈で終わるのではなく、子どもが自分自身を見つめ実践意欲を持つことだと考えています。

 次回は、決断後の杉原千畝の行動と、戦後の杉原千畝について考えてみたいと思います。

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