私はこれまで抗うつ薬の副作用に注目してきました。重篤な副作用を精神科医が知らないわけがないと思います。しかし、精神科医により処方され続けています。
精神科医 井原裕医師
精神科医はなぜ処方し続けているのでしょうか。効果があると思うから処方するのでしょう。そこで、抗うつ剤の効果の面から考えてみたいと思いました。精神科医の井原裕医師は、抗うつ剤の効果について、著書「うつの8割に薬は無意味」で次のように述べています。
精神科医ファーブルらの研究論文では、うつ病に対する6週間のプラセボ対照試験(実際の薬と偽薬との比較)の結果、抗うつ薬の効果は60%前後、プラセボの効果は40%前後という結果でした。
「抗うつ薬で治る人が60%」というと、結構高いように思われますが、「プラセボでも治る人が40%」いるのです。すなわち、プラセボでは治らず、抗うつ薬を使わないと治らない人は、「60%-40%=20%」となり、20%しかいないのです。
また、井原医師は、 2017年09月26日 のオンラインカウンセリングcotree(コトリー)の専門家インタビューで、次のように述べています。
うつ病患者の大半に抗うつ薬の効果がないことは、数々の研究結果から、精神科医の間では広く知られていたことです。20年近く前のファーブルの論文から直近(2012年)のスチュワートの論文まで、総合的に勘案すれば、うつ病患者さんの中で(プラセボ効果を排除した)薬の効能のみによって症状が改善する患者さんは、少なく見積もれば1割2分、多く見積もっても3割3分程度と結論付けられます。
細かい数字にこだわっても仕方ありませんから、ここでは2割程度に抗うつ薬の効果があると捉えて「うつの8割に薬は無意味」と論じています。でも、「10人中1人にのみ意味がある」とする論文もありますので、書名は『うつの9割に薬は無意味』とすべきだったかもしれません。
ともあれ、軽度・中等度程度のうつ病の患者さんやうつ病にまでいたらないうつ状態の方にとっては、抗うつ薬に依存した治療は、ほとんど意味がないといっていいでしょう。
著書が発行されてから5年、インタビューが行われてから3年が経ちましたが、12月13日のルームだより「精神科医や薬との向き合い方」で井原医師が予想していた通り、現在も抗うつ薬が処方され続けています。
参考文献:「うつの8割に薬は無意味」井原裕著 朝日新書