治療を許容できる統合失調症と、治療を必要としない初期統合失調症理論(4/30)

 内海聡医師は、治療を許容できる統合失調症の方は、次のような症状のある場合だと提唱しています。

①薬(タバコ、アルコール、違法薬物も含めて)を飲んでいないまっさらな状態で
②自分を責める幻聴、被害妄想などが非常に強く
③そのことによって自己(他人ではなく)に明らかな有害事象があり(たとえば自殺企図など)
④生活が一切成立せず、生存さえも保てないほどの状態が続き

⑤一過性ではなく、数か月に及びその状態が続くもの
⑥そして患者本人が治療を希望するもの

としています。

 更に内海医師は、初期統合失調症理論(自生思考、気づき亢進、漠とした被注察感、緊迫困惑気分の4特徴が基本)について次のように述べています。これらの4つの特徴は、神経質な性格を持ったり追い詰められたりすれば、だれでも持ちうる症状です。

 これらの行動や症状を持つということは、人間として自己を守ったり自我を形成したりするための本能のようなものです。しかし、精神科医たちはこれを病気であり障害であり薬物により改善させるべき問題であると述べています。これは恐ろしいことです。私に言わせれば、人間を人間でなくさせるための方針と呼ぶにふさわしいのです。

 この初期統合失調症という概念は、存在するとしてしまったらどんなに言い訳を取りつくろおうが、必ず大きな負の遺産になるのです。薬物投与、薬物依存、差別、人間の可能性の排除、レッテル貼り、といった負の遺産です。

 これらの概念が存在するからこそ、早期介入、早期支援が行われるのです。この概念が存在するからこそ、精神科で被害を受ける人が増加するのです。この概念が存在するからこそ、疾病利得にいそしむ人が増え、虐待の口実を作れる親が増えていくのです。

 意識して考えようとしているのではないのに、今している行動や考え事とは無関係に考えなどが頭の中に自然と浮かんでくる自生思考、物音や人の声が気になって集中できない気づき亢進、周囲からじろじろ見られていると思う漠とした被注察感、何かが差し迫っているようで緊張してしまうが、何故そんな気分になるのか分からなくて戸惑ってしまう緊迫困惑気分といった4つの特徴において、私は人間であれば誰でも持ち合わせている症状であると、思いました。

 しかし、これらの症状を気にすればするほど、症状が強くなっていると思ってしまい、精神科や心療内科に行くと抗精神病薬を処方され、薬漬けにされてしまうのです。そして、止めるのがたいへん難しくなってしまいます。

 アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)では、浮かんできた考えや感情に囚われてしまうことをフュージョンといいます。そして浮かんできた考えを行き来する自動車のように勝手に行き来させることを脱フュージョン、感情を受け容れそのままにしていおくことをアクセプタンスといいます。脱フュージョンとアクセプタンスを行いながら、人生を充実させるために、「今、ここで」必要なことを行っていくようにしていきます。

 ほとんどの場合、抗精神病薬は必要ないと考えています。

「精神科は今日も、やりたい放題」内海聡著 PHP文庫より

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