ほんの20年ほど前まで、うつ病は日本人にとってそれほど身近な病気ではなかった(1/13)

 6月23日のルームだよりでも紹介しましたが、ほんの20年ほど前まで発達障害(アスペルガー症候群、ADHD、LD)という言葉はありませんでした。それと同様に「うつ病」は、ほんの20年ほど前まで、日本人にとってそれほど身近な病気ではなかったのです。フジ虎ノ門健康増進センター長で精神科医の斉尾武郎氏は、「1990年代後半まで、うつ病患者数は40万人前後で、ほとんど増減しなかった」といっています。

 「1990年代後半までは、精神科で治療の対象となる患者は、強い妄想を抱いたり、自殺の恐れがあったり、通常の生活を営むことができない重篤な症状を持つ人だけでした。だから、研修医を受け入れるような大病院でもうつ病患者は数えるほどしか入院していなかった」

 しかし、2000年代に入ると患者数は右肩上がりで増え、1996年には40万人超だったものが2008年には100万人を突破。それに伴い、日本の抗うつ薬の市場規模も1996年の8倍と爆発的に伸びました。

向精神薬の市場推移(2007年~2024年)富士経済
2016年版『医療用医薬品データブック』より

 上のグラフからも読み取れるように、2008年から現在まで増え続けています。最近では、うつ病は深刻な社会問題にまでなっています。新型うつ病、産後うつ、コロナうつ、コロナ後うつ、本当にたくさんのうつ病という名がつくられています。

   なぜ、ここまで増えてしまったのでしょうか。「これらSSRIの登場によって、日本のうつ病を巡る環境は一変した」と、斉尾氏が語っています。最近では、従来の抗うつ薬(三環系、四環系、SSRI)と比較しても効果が高いうえに、副作用が少なくなったと宣伝して第4世代の抗うつ薬(SNRI系,NaSSA)が処方されています。重要な基本的注意は、従来のものと同じです。

           「週刊ポスト」2014年5月30日号より

 (つづく)

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