厚生労働省は2019年3月26日、ビバンセ(ADHD薬)の製造販売を承認しました。このビバンセは、覚せい剤の原料であるリスデキサンフェタミンメシル酸塩が使われています。リスデキサンフェタミンメシル酸塩は、服用することで体内でアンフェタミン(=覚せい剤)に変化するプロドラッグ(体内で代謝されてから薬効を示すタイプの薬)です。
厚生労働省は、2018年2月28日に同成分を覚せい剤原料に指定しました。これによって個人輸入も禁止となりました。承認申請中のビバンセの成分がアンフェタミンのプロドラッグであると知り、急いで規制をかけたのです。
薬を承認する部署(審査管理課)と規制をかける部署が縦割りであるため情報が共有されておらず、外部から指摘されるまで気づくのに時間がかかったようです。
覚せい剤原料であっても、覚せい剤そのものであっても、医薬品であれば医師は処方できますし、患者はそれを所持することができます。ただし、ADHDと医師の主観で診断されている現在、本来覚せい剤が不要な子どもにも誤って出されてしまう危険性が高いのです。
これまで、多くの精神科医は主観で診断名をつけ、発達障害の向精神薬を重篤な副作用を知らせずに安易に処方してきました。当然、覚せい剤が不必要な子どもに出される危険性が高くなることが予想されます。
もう一つの問題は、この薬が乱用される危険性があるということです。たとえ、子ども本人が乱用しなかったとしても、親が子どもを使って薬を入手するということも考えられます。子ども医療費が無料という自治体も多いので、保険診療や福祉制度が違法売買に悪用される事例も出てくる可能性があるでしょう。
また、これまでの事例から、ADHD薬は、最初子ども用の薬として承認されますが、そのうち「大人のADHD」ように追加承認されることになるので、対策を講じておかないと大きな社会問題になる可能性もあります。
皮肉なことに、「ダメ。ゼッタイ!」などと覚せい剤の乱用防止を呼びかけている自治体が、子どもたちをその危険に晒すような政策を推進しているのです。早期発見至上主義に基づいた一方的な啓発ではなく、そのリスクを正しく啓発することが重要であると考えます。
被害を未然に防ぎ、「こどもの未来への支援」と呼ぶにふさわしいことを実行していくのが、自治体の役割ではないでしょうか。
ADHD治療薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬、睡眠薬を処方されようとされるお医者さんにお願いします。伝えていない方はぜひ重要な基本的注意をご本人やご家族の方に正確に伝えてほしいと思います。 |
引用:「発達障害バブルの真相」(萬書房) 米田倫康 著