発達障害の生じるリスクが高い妊娠中(7/26)

 胎生期や発達期のどの時期に脳がダメージを受けたかによって、発達障害の症状は変わってきます。
 まず、胎生期の脳はどのようにできていくのかを考えてみたいと思います。脳の発達のプロセスは、遺伝子によってきちんと決まっています。脳の発育は下から上、中央から左右へと進んでいきます。

 脳の最も大きな部分は「大脳」といいます。大脳は右脳(右半球)と左脳(左脳)に分かれ、その両側をつなぐ脳梁(のうりょう)という器官があります。脳の後ろ側の下部には「小脳」、大脳の内側から下に続く部分には、視床(ししょう)や視床下部などの重要な器官を含む「間脳」と、中脳、橋(きょう)、延髄(えんずい)をあわせた「脳幹部」があります。そして、脳の下には、脊髄(せきずい)と呼ばれる中枢神経の束が続き、背骨(脊椎)の中を走っています。

 右脳・左脳は、それぞれ前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分かれます。大脳の表面は、大脳皮質と呼ばれる層で覆われています。大脳皮質が十分に働くには、大きな表面積を必要とします。頭蓋骨の内側の表面積に比べて、約3倍の面積が必要です。

 そのため、大脳皮質は発達するにつれて折りたたまれるようにして頭蓋骨に収まり、表面に深しシワ(凹凸)ができています。受精後26週ほどで、これらの脳の基本構造が整い、脳幹の完成が近づきます。

 妊娠中、子宮内にいる胎児の脳は、ものすごいスピードで発達しています。当然、子宮や母体のちょっとした異常(炎症や代謝の不備、栄養不足など)が、胎児の脳のダメージにつながります。その意味で、妊娠中は、最も発達障害のリスクが高い時期といえます。

 しかし、妊娠中(胎児期)だけで脳ができあがるわけでなく、脳の成長は生まれてからも続くのです。

 脳は内側(脳幹→大脳皮質)から外側に向かって、ものすごい速さでつくられていくことから、妊娠中のお母さんの状態が胎児に影響を与えてしまうことも頷けます。脳を始め胎児の体が形成されている過程では、お母さんのビタミンやミネラルを多く含むバランスのとれた食事、ストレスのない安心できる生活環境などが、胎児にとって大切であるということが分かります。

「発達障害にクスリはいらない」著者:内山葉子・国光美佳 マキノ出版 より

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