精神医療は効果があるのか? -財務省からの問題提起-  (その3)(5/15)

 財務省は、「多剤・重複投薬、長期処方への対応②」で以下のように問題提起しています。
 
「 自殺者数が11年振りに前年を上回り、自殺対策は大きな課題となっており、自殺に追い込まれることのない社会を目指し、総合的な対策を推進する必要」
「 11年前を振り返れば、厚生労働省は、自殺対策に関し、向精神薬の過量処方を問題視」

 

 11年以前といえば、自殺者が3万人を超えていました。精神科医によって、向精神薬の多剤処方や長期処方が行われていました。自死遺族でつくられる全国自死遺族連絡会の2012年の調査では、なんと自死者の90%が、精神科治療中だったのです(ルームだより2021.2.15参照)。資料にも述べられているように国民の関心が高まってきました。向精神薬による被害が大きな問題となり、テレビや新聞などに取り上げられるようになりました。その結果、向精神薬の多剤処方や長期処方の適正化を図ることを目的として、診療報酬の改定が行われるようになりました。精神科医による多剤処方や長期処方によって自殺する人や症状がどんどん悪化していく人が増えてしまったからです。厚生労働省も多くの人の声を無視することが、できなくなってしまったのです。

 更に財務省は、「 その後、向精神薬について、多剤処方や長期処方の適正化を図るべく、累次の診療報酬改定が行われてきたが、これまでの取組の効果を点検し、海外では投与期間が制限されている依存性の強い薬剤を含め、取組を強化すべきではないか」と、問題提起しています。
 
 
 「ベンゾジアゼピン」は、睡眠薬や抗不安薬として処方されます。海外では上記のように投与期間の制限が決められています。ベンゾジアゼピン系の向精神薬を飲んだら、初めは劇的に効きます。しかし、耐性といって徐々に効かなくなってきます。効かなくなった場合、日本では処方量を多くしたり薬を変えたりして、漫然と処方されています。漫然と処方された結果、依存性が強いためやめられなくなってしまう人がたいへん多いのです。
 

 ぜひ、これまでの取組の効果を点検し、海外で投与期間が制限されている依存性の高い薬剤を含め、取組を強化してほしいと思いました。このままでは、向精神薬によって、①病気にならなくてもよい人が病気にされてしまい、②その方々の能力が奪い取られ、③諸外国よりも自殺者が増え、④国の財政の大きな負担になり、⑤一部の人が利益を得て裕福な暮らしをし、⑥多くの人が苦しい生活を余儀なくされる、そんな日本になってしまうのではないでしょうか。

 そして、今回、財務省が精神医療に対する問題提起をしたのは、財政の面から必要のないところにまで、国民の税金を使う必要はないとの強い思いの現れではないか、とも思いました。
 
 
 
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