薬物依存というドロ沼からの生還(その3)(7/22)

   山口岩男氏の薬物依存というドロ沼からの生還(その3)をお伝えします。

 僕は医者でも薬剤師でもないので、専門的な知識は専門書に譲り、淡々と体験したことを語ろうと思う。この本を手に取った方の多くは、自分自身か、家族の誰かが精神薬依存の状態にある人ではないかと思う。僕自身、自分の体験を一部ブログなどでカミングアウトする中で、そのような相談をたくさん受けてきた。

 精神薬をいくら飲んでもよくならない。それどころか、ますます悪化し、今は仕事もできなくなってしまった…などの相談である。そして彼らは決まってこういうのだ。「薬をやめて元気になった岩男さんの話が聞きたいのです」と。

 そして、僕は決心した。精神薬の依存にあった12年間の経験を包み隠さず書き記し、その体験をいま精神薬の依存に苦しむ人たちに伝えよう。そのような「負」の体験を明らかにすることで、エンターテイメント業界に身を置く以上、仕事に支障が出るかもしれないが、このまま黙っていたら僕が時に死を覚悟するまでにもがき苦しんだ12年が無駄になってしまう。

 僕は幸いにして、精神薬依存から抜け出し、現在は健康で充実した毎日を送ることができている。薬でヘロヘロだったあの頃、こんな穏やかな日々が訪れるなんて、想像もできなかった。しかし、誰かが僕の口を開けて、無理やり精神薬や酒を飲ませたわけではなく、自分で心療内科の門をくぐり、薬局で自分の財布からお金を出して精神薬を「買って」、自分の手で自分の口に放り込んだのだ。そして、自分の意思でそれを飲み込み続けたのである。

 この間に失ったものに想いを馳せると、あまりの大きさに今でも身震いがする。一度しかない貴重な人生の、なんと多くの時間を無駄にしたことか。この場を借りて、迷惑をかけてしまった多くの方にお詫びをしたいと思う。

 そしてこの本が、現在うつ病やパニック障害とされる心身の不調や、精神薬の依存に陥っている方々の回復の手助けになれば、と切に願う。

「『うつ病』が僕のアイデンティティだった」山口岩男著 ユサブル より

 

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