遺伝子より環境の方が大きく影響する発達障害②〔遺伝子のスイッチのオン・オフ〕(7/24)

 前回は、発達障害の原因として、遺伝子トラブルがあることをお伝えしました。こうした遺伝子トラブルの現れ方は、世界の国や地域によって違います。

 日本人はメチレーション回路に関する遺伝子トラブルを多く持っており、葉酸回路のMTHFR(ルームだより2020/9/25参照)という酵素のトラブルは全体で約70%の保有率だといわれています。世界の他の地域では、地中海沿岸の地域の住民も、日本と同じく約70%の保有率です。しかし、地中海地域には、現在の日本のように発達障害は多く見られません。

 もちろん、発達障害の認知度や、正常範囲のとらえ方の違いなどもあるでしょうが、その他にも理由と考えられることがあります。それが、遺伝子のスイッチのオン・オフ(2020/9/25参照)という現象です。

 遺伝子の研究が、今ほど進んでいなかったころは、体のすべては遺伝子によって決定づけられると考えられていました。しかし、現在では、遺伝子そのものは同じでも、様々な条件で、その働きが抑制されたり、抑制が外れて働きが表面化したりすることが分かってきました。つまり、遺伝子のスイッチがオンになったり、オフになったりすることで、影響の現れ方(遺伝子の表現型)が変わることが分かってきたのです。

 例えば、あるガンを起こす遺伝子を受け継いだとしても、そのスイッチをオフにできれば、発症を防げます。逆に、ガンを抑制する遺伝子がオフになったら、ガンの発症率が高まります。 

 遺伝子のオン・オフは、様々な環境要因によって決まることが分かってきています。環境によって変わる遺伝子のスイッチの入り方をエピジェネティクスと呼びます。

 同じ頻度の遺伝子トラブルを持つ日本と地中海地域とで、発達障害の発生率に大きな差があるのも、エピジェネティクスが影響していると考えられます。

 地中海地域では、日本に比べると、降り注ぐ太陽のもとで、ストレスの少ないのんびりした生活や、添加物の少ない自然な食生活を送ることができており、エピジェネティクス的に発達障害を起こしにくいと考えることができます。


 以前から、発達障害は遺伝の問題とされながらも、遺伝的に同一である一卵性双生児の自閉症の発生率が、100%は一致しないことが知られていました。また、遺伝子そのものが、50年くらいの短い期間で大きく変わることは考えにくいにもかかわらず、発達障害が急激に増えていることも注目されてきました。その理由は、遺伝子そのものの違いではなく、スイッチの入り方…エピジェネティクスにあったのです。

 つまり、遺伝子そのものより環境の方が、脳や体、病気に、はるかに大きく影響するということです。遺伝で決定づけられる病気もありますが、それはごく少数です。その遺伝病も、食事や生活改善で軽くなったり、重症度が下がったりすることがあります。

 虫の世界の例でいうと、女王バチとミツバチの遺伝子は同じです。エサとしてロイヤルゼリーを食べることで、体と機能の大きな違いが出てくるのです。遺伝子より、いかに環境が重要か分かります。「遺伝子より環境の方がはるかに重要」というのは、もちろん発達障害にも当てはまります。発達障害の子どもたちには、遺伝子トラブルが多く見られますが、環境でそれをカバーしていくことができるのです。

 日本と地中海地域の子どもは、遺伝子トラブルの保有率は同等だけれども、発達障害の発症率に差があるのは、エピジェネティクス(遺伝子のスイッチの入り方)による影響だったのです。そして、食べ物や生活環境によって、発達障害の症状が抑えられるということも分かりました。ルームだより2021/6/13では、発達障害の子供が増えてきた原因を考えました。今回、遺伝子の面から考えることにより、遺伝子トラブルが原因と考えるよりも、食生活や環境が原因と考えた方がよいということが裏付けられたように思います。
 子どもに困った症状が見られた場合、私たち大人の行動を振り返る、食生活や生活環境を見直すことで、子どもの症状が改善されていくということを確信しました。改善に取り組むことにより、子どもとともに私たち大人も充実していくのではないか、と思いました。 

「発達障害にクスリはいらない」著者:内山葉子・国光美佳 マキノ出版 より

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