不安を避けようとすればするほど、不安に対する不安は増す(1/25)


スティーブン.C.ヘイズ

 アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を提唱したスティーブン.C.ヘイズらによる大規模な研究によって、不安を消そうとしたり避けようとしたりすると、さまざまな問題に結びつくことが明らかになっています。その一例が、不安障害、過剰な心配、うつ、職務遂行能力の低下、物質依存性の上昇、生活水準の低下、危険性の高い性行動、境界性パーソナリティ障害、重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)、長期障害、重度の精神機能障害です。ヘイズらは、精神機能障害を引き起こす唯一にして最大の要因は「不安」といって間違いないだろう、といっています。

 悲しいかな、不安を避けようとすればするほど、不安に対する不安は増してしまうのです。



 不安を減らすために、抗不安薬や睡眠薬を服用したらどうなるでしょう。短期的な効果は見込めるでしょう。しかし、(a)やがて効かなくなり不安が増大、(b)薬物への依存、(c)身体的な中毒性、(d)その他の身体的・感情的副作用、(e)不安への効果的な対処法を学べない、といった問題が多く出てくる可能性があります。お酒を飲んだらどうでしょう。やはり一時的にはよい気分になるでしょうが、不安が強くなるたびにお酒で解消しようとすると、やがてアルコール依存症になってしまう可能性が出てきます。お酒も薬物なのです。

 不安や恐怖などのネガティブな感情は、人間が生き抜くために必要な感情であることを理解し、消そうとしたり避けようとしたりすることを徐々に弱くし、受け容れていくようにします。感情をどのように受け容れる(アクセプト)かは、当ルームだより12月11日を参照していただければと思います。 

 私はこれまでの自分を振り返ってみると、何も知らずに薬やお酒、タバコに頼ってばかりいたように思います。お酒を飲めば一時的に気が大きくなり不安が解消される、タバコを吸えばリラックスできる、降圧剤は血圧が下がるが飲み続けなければならない、と言われる…。

 これらは根本的な改善にはなっていなかったのです。知らないということは、人生の大きな損失を生んでしまう場合もあることを痛感しました。しかし、その損失は、知ることにより新たな行動をとることができ、取り戻せるということも経験しました。

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