「初老期うつ病」と、すぐに病名をつけることに疑問です(5/16)

   上島竜平さん         渡辺裕之さん
                                         出典:AERA

 5月3日に俳優の渡辺裕之さんが、その約1週間後の11日にダチョウ倶楽部のメンバーで、お笑い芸人の上島竜兵さんが急死されました。渡辺さんは縊死、上島さんは自殺とみられるとの報道がありました。お2人のご冥福を心からお祈りいたします。お2人のことに対して、精神科医は2022年5月15日配信のAERAで以下のように述べています。

 一般的に60代になると初老期うつ病を発症しやすいと言われている。これは50代から60代半ばの初老期に発症するうつ病で、何らかの喪失体験がきっかけになることが多い。喪失体験とは、本人が大切なものを失ったと感じて「自分はもうダメだ」と思い詰めるような体験だという。

 60代で、それまで社会的にも活躍していたような男性だと、年齢的にも体力的にも、これからだんだんと高齢者になっていく中で、どのように自分を高齢者として着地させていくのかが大きな課題になる。

 しかし、私は次のように考えます。人間は誰でも発達課題があります。10代には10代の、20代には20代の、60代には60代の課題があります。そして、誰しもその課題を受け容れながら、その課題に向き合っていくことが求められるようになってきます。私は68歳ですが、身体的、精神的な衰えを感じています。感じているからこそ、食事を見直したり運動や読書の機会を多くとったりしています。

 私が疑問に思うのは、そのような発達課題に伴う精神症状(気分が沈む、やる気が出ない、眠れない、怒りっぽい等)が見られた場合、精神科医が病名をつけていることです。人間は生きている限り苦悩が伴います。人類はその苦悩があるからこそ、苦悩を受け容れながら創造的に、選択的に、協力しながら乗り越えてきたのではないでしょうか。精神科医もその現実を少しずつ受け入れることが大切だと言っています。しかし、誰にでも訪れる老いは自然であると認めておきながら、病名をつけています。病名をつける時は、自然ではない(健康ではない、異常である)状態の時ではないでしょうか。そこに病名をつける必要があるのか、私はたいへん疑問に思っています。

 受診した人が、医師に「初老期うつ病」と診断され向精神薬を処方されたら、「病気なんだからしかたがない」「ショックだ」等と、自分は病気なんだと信じ服用してしまうでしょう。服用して改善すればよいのですが…。

 AERAには、一時は薬を服用していた、元気を取り戻したよう、少しずつじわじわと心の病は蝕み、大きな不安から抜け出せなくなった、と渡辺さんの状態が書かれていますが、受診し薬を服用していたのですから、この間の治療のあり方を詳しく検証されることが大切だと思いました。精神科医は「初老期うつ病」と病名ばかりを説明し、治療のあり方については触れていません。

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