yomiDr(2016.6.16)は、「2013年11月の市販開始以降、使用した患者の死亡報告が相次いだ抗精神病薬ゼプリオン。4週に1度、肩か 臀部 (お尻)の筋肉に打つだけで効果が持続する便利な注射剤だが、市販後、半年の死亡報告が32人に上り、このうち16人が突然死、あるいは突然死が疑われる死亡であることなどを、読売新聞などで伝えてきた」
「死亡報告の多さを受けて、厚生労働省は2014年4月、ゼプリオンに関する安全性速報(ブルーレター)の発出を指示。販売するヤンセンファーマ社に、医療関係者への注意喚起を行うよう求めた。更に、突然死のリスク上昇などにつながる多剤併用を防ぐため、添付文書の改訂も行われた」
「ただ、以後も他の薬より早いペースで死亡報告が増えていった。2016年6月15日現在、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のサイトに掲載されたゼプリオン使用後の死亡例(2016年1月までの報告を掲載)は83人に上る。手をこまねいていると、今年中に100人を超える恐れがある」と伝えています。
また、精神医学の人権問題に取り組む市民団体「市民の人権擁護の会」の小倉謙氏は、
「メーカーはもちろん、適正に使用しなかった精神科医も何のお咎めもなく、販売がそのまま継続されてきました。もしもこれが食品や飲食店だったら間違いなく販売中止、営業停止となり、店もメーカーもぶっつぶれる話になっていくでしょう。しかし、この精神医療業界は『統合失調症患者の死亡率はもともと高く、ほかの抗精神病薬もきちんと調べれば同様の結果になるはず』で片付く話なのです」
「結局そのゼプリオン問題は何ら改善されていません。2019年9月24日には、適応症ではない発達障害(自閉症スペクトラム障害)に対して使われた10代男性が死亡する事件が起きています」
「そして、8月27日にはそのゼプリオンの新型版『ゼプリオンTRI』が承認されました。このゼプリオンTRIですが、従来型が4週に1回投与であるのに対し、なんと12週に1回となっています。つまり、それだけの期間持続して体内に残り続けるということです」
「これは非常に恐ろしいことです。基本的な用法も守らない精神科医にこれを使わせたら大変なことになります。なぜならば、打ってしまった後に不具合が生じても対処のしようがないのです。実際、ゼプリオンの添付文書には、『一度投与すると直ちに薬物を体外に排除する方法がないため、本剤を投与する場合は、予めその必要性について十分に検討し、副作用の予防、副作用発現時の処置、過量投与等について十分留意すること』と書いてあります」と、述べています。
最後にyomiDrは、「他の抗精神病薬とゼプリオンを安易に併用する医師の投与法に問題があるのは明らかだが、こうした非常識な投与は根絶されていない。また、ゼプリオンの用法・用量にも見直すべき点があるのかもしれない。死亡例の詳細な分析や、正確な使用者数をもとにした死亡率の算出、使用中の患者の全例調査、適正投与量を見極める新たな研究などが早急に必要ではないか。患者の命を軽視した傍観は許されない」と結んでいます。
yomiDr(2016.6.16)佐藤記者の「新・精神医療ルネサンス」(抗精神病薬「ゼプリオン」使用後の死者80人超えに)
精神医学の人権問題に取り組む市民団体「市民の人権擁護の会」小倉謙氏、facebook「薬物を使わない人生の会」
より
精神医学の人権問題に取り組む市民団体「市民の人権擁護の会」小倉謙氏、facebook「薬物を使わない人生の会」
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