米田倫康 氏
「発達障害バブルの真相」(萬書房)の著者である米田倫康氏は、本書で次のように述べています。もしも正しい診断方法が存在するならば、想定される理論上の『発達障害』と、現実に診断されている『発達障害』は一致するはずです。ところが、掲げているものと実際に取り扱っているものが全然違うのです」(図1)
では、専門家自身はどのような認識を持っているのでしょうか。日本の発達障害研究の第1人者である杉山登志郎氏(児童精神科医)の言葉が、新聞記事で以下のように引用されています。「杉山さんは、現在の精神医学について、いまだに表面的兆候から症状を区別するのが主流で、『科学的な根拠のある診断ができていない』と指摘」(『読売新聞』、2017年9月7日、福井版朝刊)
杉山氏の言葉どおり、発達障害診断のみならず精神科診断の領域は「科学」の域には達していないのが実情です。複数の精神科医が同じ人物を診ても、それぞれの診立てが全く異なるというのは普通の話です。
19人を殺害した相模原障害者施設襲撃事件の犯人は、事件を起こす前に措置入院させられていたのですが、関わった4人の精神科医の診断がすべて見事に異なり、合計7つもの病名がつけられていました。ということは、精神障害・発達障害の診断において、絶対的に正しい診断は存在しないといえるのではないでしょうか。
ところが日本では発達障害の診断ができるのは医師に限られており、診断が出ないと福祉制度、支援制度を利用するのが難しいという現実が存在するため、診断が絶大な影響力を持ち、絶対視されてしまう傾向にあります。
いったん診断がついたら、たとえそれが明らかな誤診であったとしてもそれを訂正するのは困難であるのが実態なのです。
参考文献:「発達障害バブルの真相」米田倫康 著 萬書房