レオン・アイゼンバーグ氏
「ADHD」とは、注意欠如多動性障害と呼び、子どもの発達障害として診断されています。最近では大人でも「ADHD」と診断される方が増えてきています。
その「ADHDの父」と呼ばれる児童精神科医、社会精神科医、医療教育者であるレオン・アイゼンバーグ氏が亡くなる7カ月前のインタビューで「ADHDは作られた病気の典型的な例である」とドイツのDer Spiegel誌に対してコメントしていたのです。アイゼンバーグ氏は2009年10月に亡くなっており、インタビューはその前に実施されました。
「ADHD」は当初、「幼少期の運動過剰反応」と呼ばれており、後に「ADHD」と名付けられた注意欠陥・多動性障害は1968年から40年以上にわたって他の精神疾患と並んで精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-IV-TR)に名を連ねています。
障害の定義付けに伴いADHDの治療薬の売上も増加し、1993年に34kgだったものが2011年には1760kgになり、18年間で約50倍に跳ね上がっています。薬の投与が広まった結果、アメリカでは10歳の男の子10人のうち1人がすでにADHDの治療薬を飲んでいます。アイゼンバーグ氏は、実際に精神障害の症状を持つ子どもは存在するものの、製薬会社の力と過剰診断によってADHD患者の数が急増したと述べてます。
一方で、アメリカの心理学者リサ・コスグローブさんらが調査したところ、DSMの委員会のメンバー170人のうち95人、つまり約56%は製薬会社と金融的な関係があることが発見されました。気分障害と統合失調症およびその他精神異常については100%のメンバーが製薬会社とつながっていたとのことです。精神病の治療としてまず薬が投与されるタイプの病気に関しては、特にこのつながりが強かったそうです。
また、カリフォルニア大学のアーウィン・サヴォドニック教授は「精神医学の用語はまさしく製薬会社によって定義されているのです」と語っています。その一例として、マサチューセッツ総合病院の小児精神薬理学科やハーバード・メディカル・スクールの准教授は2000年から2007年までの間に製薬会社から100万ドル(約1億円)以上を受け取っていたことが発覚しています。
レオン・アイゼンバーグ氏は、児童虐待被害児を無視して遺伝性疾患としてADHDが存在するとし、世界中の子供たちが薬漬けになった結果を最後に悔いたのでしょう。アスペルガーは同じ理由でDSM-5から消えました。
日本ではどうでしょう。「大人の精神症状=主観による診断 薬漬け」「子供の発達傷害=主観による診断、薬漬け」は止まりません。
向精神薬の重要な副作用を説明せずに、処方する精神科医はどのような考えや気持ちで患者さんに処方しているのでしょう。2005年に施行された発達障害者支援法を正当な根拠として、躊躇なく処方しているのでしょうか。医療用医薬品の説明書には、重要な副作用があることを患者や家族に十分に説明することと書いてあります。