子どもの主体性を育む道徳の授業(その6)(10/31)

カウンセラー的立場に立って聴き役に徹する

 前回までの「道徳科の特質を理解する(その1)」「目標とする価値を学習指導要領解説で理解し指導観を持つ (その2)」「資料を分析をする(その3)」「主発問を考える(その4)」「価値を深める発問を考える(その5)」を踏まえて、道徳の授業を行いました。

 授業で留意したいことは、教師は目標とする価値や子どもの素直な考えや気持ち(本音)を引き出そうとして、日常生活を想起させたり理由を細かく聞いたりして、教師主導にならないようにすることだと思います。目標とする価値は資料のできごとの中にあるのであって、その価値に気づき深めていくのは子どもです。教師は資料中のできごとから、子どもたちが安心して考えたことや湧き起った気持ちを表出しやすくするために、聴き役に徹します。

 以下は実際の授業での様子です。場面再現更生法(口演法)で私が実際に「ぼく」がドッジボールをしている時のように話をしていきます。主1は主発問1、子1は子ども1、深1は深める発問1を表しています。

主1「ただし君も相手チームも見えなかったらしいから『ぼく』はどんなことを思ったのでしょう」(葛藤に至る前の場面)
子1「正直に外野に出よう」
子2「しまった」
子3「こんな時に何で当たるんだよ」
子4「悔しいなあ」

主2「ただし君が『がんばらなくちゃ』と言った時、『ぼく』はどんなことを思ったのでしょう」(若干葛藤に至った場面)
子1「ぼく当たったから外野に出るよ」
子2「外野に出ようと思ったけれど、ただし君にがんばらなくちゃと言われたので、このままいよう」
子3「ただし君や相手も気づいていないので、出なくていいか」

[口演法で]ぼくは、ただし君の声に引っぱられるようにして、コートの反対側へ走った。そしてとんできたボールをよけた。ゲームはそのまま続いた。しばらくすると、ただし君も、もう一人の味方も次々にアウトになり、ぼく一人だけが残った。ぼくは、もう夢中でコートの中を走り、ボールを投げた。ぼくのがんばりでチームは勢いをもり返し、反対に相手チームが一人だけになった。そして、ついに最後の一人に当たった。「やったあ。」「勝ったぞ、大逆転。」みんなは口々に叫びながら、ぼくのところに一斉にかけ寄ってきた。「今日のMVP、こうちゃん。」誰かがおどけたような声で言った。その声でみんなの歓声はまた大きくなった。みんなは大喜びをしていた。


「どうしよう…」  

主3「試合に勝ってみんなが大喜びをしている時、『ぼく』はどんなことを思っただろう」(葛藤の場面)
子1「勝っても嬉しくないなあ」
子2「やったあ、なんか照れちゃうなあ」(かすったことを忘れている)
子3「(忘れているという意見に対して)それはないな」
子4「嬉しくないので、かすったことを正直にみんなに言おう」
子5「みんなが喜んでいるのに、今さら言えないよ」

子6「言わないと自分の恥だと思うから言う」
子7「みんなが残念がるから言わないというか、言えない」
子8「大切な友達を悲しませたくないから、言うのをやめる」
子9「でも言わないと後できっと後悔をする」
子10「言うとみんなから責められるかもしれないので言いたくても言えない」
 ここまでの子どもたちの発言を聞いていると、言ったときと言わなかった時の後のそれぞれの展開を予想し、それぞれの立場に立っての道徳的実践の意味を考えていると、私は子どもたちの発言を聴きながら思いました。

 そこで、道徳的実践の難しさを議論することにより、更に価値である「正直、誠実」を深く見つめ価値の再確認を図り今後の実践意欲につなげていきたいと考え、以下の価値を深める発問をしました。
深1「言うと責められるかもしれないということも考えられるけれど、どう思いますか」
子11「う~ん、それなら言いたくても言えないなあ。責められると辛いから」
子12「責められそうもない仲のいい友達だけに言おう」
子13「それはだめだよ。言われた友達がほかの人たちに言うかもしれない。そうしたら、ほかの友達がどうして自分たちに言わなかったのかと、もっと責められるよ」
子14「なかなか言うのが難しいなあ。今度もしこんなことがあったら迷わず外野に出るようにしようと今日のことを生かそう」
子15「言わなかった時の後悔と言ったときの後悔だったら、言った時の後悔の方がいい」

 葛藤の場面で、話し合う前の言う考えは19人、言わない考えは8人でした。話し合った後の言う考えは12人、言わない考えは15人でした。ぼくの考えを子どもたちに確認してから、本時の感想をワークシートに書きました。

 

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