カウンセリングの新しい療法、ACT(アクト)の考え方を生かして(その5)(4/21)

ネガティブな思考(考え)に巻き込まれたり囚われたりすると・・・

 新型コロナウィルスの感染拡大によって、不安や恐怖を感じ、(その2)(4/16)のような自分自身にも他者に対してもネガティブな考えが浮かんできまます。

 私たちは、連日の報道や身近な感染者により、更にネガティブな思考に巻き込まれ、そして頭から離れず囚われやすくなります。巻き込まれたり囚われたりすることをACTではフュージョン(融合)と言います。ネガティブな思考がフュージョンすると、人は、その思考から逃れようとしたり回避しようとしたりします。その結果、自分自身や他者に対して、自分が安心できる行動をとり、自分を守ろうとします。

 現在、感染した方、ご家族や関係者の方々、医療に従事されている方々等へ強い批判、差別的な発言、嫌悪する発言などが見られています。東日本大震災の際に起こった原発事故の時も、福島の方々は言われなき差別や偏見を受けました。

      

 4月18日にACTでは、私たちのマインドは「自己防衛マシーン」となっているとお伝えしました。批判、差別、偏見的な発言や行為は、不安や恐怖から回避し安心するために、自分を守るためにとった行動とも言えるのではないでしょうか。怒りは第2感情で第1感情は不安や恐怖になります。人間である限り、誰でも持ち合わせている感情です。私にも私のマインドが話しかけてきます。

 しかし、私は、批判、差別、偏見的な発言は、私たち人間が豊かで充実した人生を送るのに必要な行動かといった観点で考えたいです。批判、差別、偏見的な発言は一時的には充足感を得られると思いますが、後になって後悔の念が出てくることがあるかもしれません。また、受けた人の精神的なダメージは計り知れないものがあります。私たち大人がこのような発言や行動をとれば、それは子どもたちにも大きな影響を与えてしまいます。

 感染したかもしれないと考える方がこれからは、多く出現してしまうことが予想されます。批判、差別、偏見的な発言をしていた方も感染する可能性があります。そんな時、そのような方はどんな気持ちになるでしょう。また、批判、差別、偏見的な風潮があったら、正直に感染の事実を伝えず、無理して仕事をしてしまう方が現れるかもしれません。そうなれば感染拡大が止まらず、行く行くは自分にも新型コロナウィルスが降りかかってくる恐れもあります。

 私たちがネガティブな思考(考え)に巻き込まれたり囚われたりすると、自分にも他者にも社会全体にも悪影響を与えてしまうことになることが考えられます。それでは巻き込まれないようにしたり囚われないようにしたりするにはどうしたらよいのでしょうか。次回で考えてみたいと思います。

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