カウンセリングの新しい療法、ACT(アクト)の考え方を生かして(その4)(4/20)

人は環境については恐怖心を抱く(原始脳が働く)が、自己については楽観的に考える(理性脳が働く)傾向がある。 (ハゼルトンとネトルによる)

    右図(スマホでは下)の人の脳は、脳幹・脊髄(爬虫類の脳)→大脳辺縁系(動物の脳)→大脳新皮質(人間の脳)と進化してきました。脳幹・脊髄を覆うように大脳辺縁系ができました。そしてその2つを覆うように大脳新皮質ができました。
 脳幹・脊髄と大脳辺縁系を原始脳、大脳新皮質を理性脳という言い方もあります。

<ヒト 自己の存在を否定する 生物>より

 脳幹・脊髄(爬虫類の脳)は、生命維持機能(呼吸、消化、心拍、体温調整、発汗、本能的な表情など)を自動制御する働きがあります。これらは無意識のうちに発現します。
 大脳辺縁系(動物の脳)は、本能(食欲、性欲、感情)をつかさどります。進化の古い過程でできた脳で、爬虫類にも存在します。
 大脳新皮質(人間の脳)は、更により良く生きるために、思考、判断、信念、分析、想起、空想などの理性を働かせることができ、一番最後にできました。

 人が生存を脅かすような外的脅威に出会った時、瞬時に生命維持機能を持った原始脳が働きます。危険から逃れるためには瞬時に働かさなければなりません。そして、「不安」「恐怖」などの感情的な形成は、困難な環境でも種が生存できるように数百万年もかけて進化した適応メカニズムだと認知神経学者だけでなく進化心理学者も論じています。
 このように、脳科学的に考えても人は生き抜くためにネガティブな感情や思考が優先されていると言えるでしょう。

 しかし、人は自分の健康問題について楽観的(自分は大丈夫だろう)に考える傾向があり、リスク回避の考えが働かなくなります。これについて、人は内的資源(自分)から生じる危害や脅威よりも外的資源(他人)から生じる危害や脅威に対して、より敏感に反応する、と指摘しています(エラーマネジメント理論)。つまり、外的脅威は原始脳の衝動的な反応を促し、これに対して、内的脅威は見極めるのが難しいため、理性脳(大脳新皮質)の思考する働きを使う必要が出てきます。そして、安心感を得て精神のバランスをとるために楽観的・希望的に考えるようになったのでしょう。

 ハゼルトンとネトルは、「人は環境については恐怖心を抱く(原始脳が働く)が、自己については楽観的に考える(理性脳が働く)傾向がある。」と言っています。私は学校の先生から、「人に優しく、自分に厳しい人間になりなさい。」という話をよく聞きました。今、学校の先生のお話を思い出しているのですが、それとは反対に、人は基本的には、人に厳しく、自分に優しい傾向があるのかなと思いました。しかし、私たちは人間のこの基本的な傾向を知ることにより、人間の理性脳を意識して働かせることにより、学校の先生がおっしゃっていた「人に優しく、自分に厳しい」人間になることができると考えています。          
参考文献:売れる脳科学  著/クリストフ・モリン 、パトリック・ランヴォワゼ ダイレクト出版
ヒト…自己の存在を否定する 生物     

                 
 

 

 

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