出生してから成人後まで成長が続く脳
脳の神経細胞は、出生後1~2ヵ月でほぼ大人と同じ数になりますが、それで脳の組織が完全に出来上がるわけではありません。出生時に300~400gの重さの脳は、生後1年で1生分以上の脳組織がつくられ、約2倍になります。さらに、3歳で3倍となり、6歳で90%ができ、12歳で大人と同じ重さになります。
重さが大人と同じになっても、脳の発達はまだまだ続きます。そこで、起こっているのは、神経細胞の髄消化(ずいしょうか)と呼ばれる現象です。神経細胞の周りに、リン脂質でできたサヤ状の部分ができていくのが髄消化です。神経細胞をこの組織で取り囲むことにより、情報を早く伝えられるようになります。
その材料になるリン脂質は、コレステロールを豊富に含みます。ですから、脳の髄消化が起こる時期には、コレステロールが必要です。コレステロールは体内でつくり出されますが、その材料になる資質を適切にとらなければなりません。
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神経細胞の数は、12歳まで一気に増えた後、それ以上はあまり増えませんが、髄消化が進むことで、さらに体積が増えていきます。また、神経細胞どうしの連結部分であるシナプスもどんどん増加していき、神経の回路網が張り巡らされ、脳の機能を発展させていきます。
さらに、神経細胞の刈り込みも行われます。植木が伸びすぎた後に、きれいな形に刈り込むように、ひとまず必要以上につくった神経細胞を、不必要な信号がカットされて、より効率よく脳が働くように、適切に刈り込んでいく作業です。
これらの発達は、10~20代前半まで、非常に速いスピードで行われます。胎生期ほど根本的な部分ではないにせよ、このような脳の変化が起こっている時期にも、発達障害のリスクは大きいといえます。
さらに、脳の中の変化は一生起こり続けます。一昔前は、脳の神経細胞は、一度できたら、そのまま変わらず、増えもしないといわれていました。しかし、現在では、一生、脳細胞がつくられ続けることを裏づける研究結果が出ています。いろいろな細胞のもとになる幹細胞が、記憶を司る脳の海馬などで発見されているのです。
脳は、胎生期から乳幼児期、児童期、そして青年期まで急速に発達していきます。このような時期に、たいへん副作用の強い劇薬指定されている向精神薬を子どもに服用させてよいのでしょうか。まして、乳幼児期の安全性が確立されていない薬が多く処方されているのです。 子どもの困った言動が見られた時、まずは、食事や生活環境の改善、大人の関わり方の見直しが大切になってくると考えます。 ADHD治療薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬(小児の自閉症スペクトラムの易刺激性を抑える薬を含む)、睡眠薬を処方されようとされるお医者さんにお願いします。伝えていない方は、ぜひ重要な基本的注意をご本人やご家族の方に、正確に伝えてほしいと思います。 |
「発達障害にクスリはいらない」内山葉子・国光美佳著 マキノ出版 より