製薬会社の向精神薬を販売するための知恵(後編)(5/9)

 抗うつ薬等の向精神薬に関して、薬剤の投与量については、しばしば誇張があり、さしたる根拠もないままに、「上限まで増量」「最大量をそのまま維持」等と言います。投与期間についても、「早期発見、早期治療」を主張し、よくなってからも「再発、再燃防止のために最大量のままで維持」、場合によっては「生涯にわたる服薬が必要」「服薬中止によって再発するリスクがある」等と主張します。

 製薬会社は最近、さかんに「アドヒアランス(adherence)の向上」ということを言い始めています。「アドヒアランス」というのは薬を飲み続けるという意味ですが、いうまでもなく、アドヒアランスの向上は、製薬会社にとっては安定した売り上げの確保につながります。しかし、アドヒアランスの向上について高唱するわりに、「薬をやめたい」という希望には少しも応えようとしません。薬をやめる方法を情報提供することは、製薬会社にとってサッカーのオウン・ゴールのようなものだからです。


        厚生労働省保険局調査課(平成30年12月作成)

 製薬会社も、市場の拡大こそ営利への道と判断すれば、当然、それを追求します。本田宗一郎も、かつて「需要がそこにあるのではない。われわれのアイデアが、そこに需要を作りだすのだ」(『得手に帆あげて-本田宗一郎の人生哲学』)と述べていました。その言葉を製薬会社用に言いかえれば、「患者がそこにいるのではない。製薬会社のアイデアこそが、そこに患者を作りだすのだ」となるのは、理の当然といえるでしょう。

 井原裕医師は著書「うつの8割に薬は無意味」で上記のように述べています。

 私は、ネット上で、ある製薬会社の統合失調症に関する記事を読みましたが、まさしく「長期にわたって飲み続けなければならない」「飲み忘れによる再発防止のための効果が長く続く持続性注射薬もある」等の言葉がありました。そこには使用した患者の死亡報告や重篤な副作用の説明は一切ありませんでした。

 心が疲れたら休める社会、偏見をなくす社会の構築等が述べられていて、以前の私でしたら、読んで納得してしまったことでしょう。しかし、現在の私は、そこにはたくみに抗精神病薬への誘導がなされていると思うようになったと同時に、騙されてしまう恐ろしさと腹立たしさを感じるようになったのです。このような記事を、メディアがネット上で紹介しているのですから、多くの人が精神科や心療内科に行き、薬漬けになってしまう構図ができ上ってしまっていると言わざるを得ません。

「うつの8割に薬は無意味」井原裕著 朝日新書 より

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